Amazonのプライムビデオで『不屈の男 アンブロークン』を鑑賞。
あらすじ
イタリア系アメリカ人の主人公ルイ・ザンペリーニは自暴自棄な幼少時代を送っていたが、兄の助言からマラソンランナーとしての才能を開花させ、オリンピックにも出場する。兄の助言がルイを”どんな状況に置かれても耐える不屈の男”にした。
オリンピックの後に日米開戦し、空軍兵士として任務につく。
任務中、飛行機が海に不時着し、救命ボートで47日間漂流する。食料不足、水不足、サメの襲撃、日本航空機の襲撃と数々の難題も不屈の精神で乗り越える。
そして日本海軍の捕虜となり収容所へ。
その収容所を管理する日本人・渡辺伍長からは執拗に虐待を受けるがこれも不屈の精神で乗り越えて終戦を迎える。
そして1996年、戦争のために東京オリンピックで走る夢が叶わなかったルイは聖火ランナーとして日本の地を走った。
というもの。
すべてルイ自身の経験を元に書かれた原作本の映画化。
渡辺伍長も実在の人物である。
公開前に「反日映画だ」と騒動になった
日本軍による虐待が描かれたとあって、日本では公開を反対する署名が1万も集まった。そのため、配給会社がなかなか見つからなく、なんとか見つかってもかなり小規模な上映しかできなかった。
観たけどこれは反日映画ではない
という経緯を知っている上で鑑賞。
そして率直に思ったのが「別に反日じゃないよね。」ということ。
描いているのは人を暴力に駆り立てる戦争の酷さ
映画を通して軸になっているのはルイのあきらめない、屈しない強い精神。時間としても後半に日本軍がやっと出てくるほど。
たしかに、日本人からの暴力を描いてはいるが、「日本人がこんなひどいことやってたんたぜ!」ということを伝えたいわけではない。「戦争という状況下では人はとんでもないこともやらかす。」ということを伝えたいだけなのだ。
それを伝えるために「日本の捕虜になったアメリカ人の自伝」を使ったにすぎない。
(逆にアメリカが日本にひどいことをした、という事実もあるけれどそれも1つの映画に入れてしまっては、映画として話がゴチャゴチャになる。だからそれはそれで別の映画として描けば良い)
大事なのは何を映像にしているかではなくてその映像を通して何を伝えたいかを見ることなのだと、この映画を巡る批評から改めて感じた。
渡辺睦裕という男
ルイを執拗に虐待した渡辺伍長。
映画ではこの人の内面があまりにも描かれていない。そこがもったい無かった。
この人が気になってネットで調べたら、この人も「戦争」というシステムの被害者と見ることもできる。
良家の出なのに、軍の中で出世ができないという苦しみからの鬱屈が暴力として出たと見る人もいるようで。
『アンブロークン』のMIYAVIは美男で良家の息子なのに性格がめちゃ悪く、さらに出世が遅れてて鬱屈…みたいなキャラでいろいろ「特別」すぎるけど、『レイルウェイ』の真田広之はちょっと特殊技能(語学の才)がある一般人が官僚制の中でエスカレートしたみたいなキャラで、フツーでリアルなんよ
— saebou (@Cristoforou) 2016年2月13日
戦後、GHQから訴追を受けるも逃げきり、その手記を後に週刊誌に出した。
GHQの執拗な追跡を逃げ切った渡邊睦裕軍曹の手記【アンブロークン】 – ミツジのブログ
日本兵役MIYAVIの演技
この渡辺伍長の役をギタリストのMIYAVIが演じる。
顔がとても中性的というか、美しくしすぎている違和感があった。
あと、「アンブロークン」のMIYAVIに「戦場のメリークリスマス」の坂本龍一を照らし重ねていたのは自分だけじゃないはず。
それくらいシンクロしてた。 pic.twitter.com/cmk4iJSxLo— わか (@waka_pie) 2016年2月13日
この違和感は『戦場のメリークリスマス』を観たときにもあった。この戦時とは思えないような容貌が、一層暴力を際立たせる。
にしても、このMIYAVIの憎い顔がとても印象的。最近のappleのCMを見ても思い出すぐらい。 きっと悪役としていい役者になるのでは?
「反日映画だ」とこの映画を嫌うのでなく、新たな才能が出てきたことを見てもらいたいと思った。
ちなみにギターを弾くところもカッコイイ!!
最後に
決して反日映画ではない。あくまで、諦めない不屈の精神を持った男を描いたもの。戦争が人を変えてしまう恐ろしさを描いたもの。
『不屈の男 アンブロークン』